2004メジャーリーグ分析

ア・リーグ 東地区 
 最下位のデビルレイズまでが、なかなかの補強を見せるという最激戦区と化した。デビルレイズは中地区に移動すれば優勝候補だろう。それでも最下位予想をせざるを得ないというぐらいの強豪揃いだ。
 レッドソックスはシリングを獲得して、ペドロ、シリング、ロウの三枚看板は近年稀に見る先発陣だ。何せ三人とも20勝経験者で力は衰えていない。昨年唯一の弱点だったストッパーもアスレチックスからフォークを獲得して、ストッパー失格となった金、エリクソン、ウィリアムソン、メンドーサがセットアップに専念して結果を残せば、まさに30球団で最高の投手陣だ。そして打線は昨年リーグ優勝の原動力となった強力打線はほぼそのまま維持。今年駄目ならルースの呪いが解けることは無いのではないだろうか。
 ヤンキースはつらい。打線はライトにシェフィールドを補強して打線は昨年よりも上積みされた。しかし先発陣はボロボロだ。昨年ウィークポイントだった救援陣はゴードンとクアントリルを補強して目処が立ったが、ペティット、クレメンス、ウェルズに加えて谷間のウィーバーまで放出してしまいムシーナしかいなくなってしまった。二番手はエクスポズから獲得したバスケスで、彼は15勝は計算が立つ。しかしその為にニック・ジョンソンを放出してしまった。ジアンビーは昨年も40HRとは言え打率は.250でニューヨークに来てからすっかり勝負弱くなり、来年は7番を打ちそうだ。昨年ツープラトンだったジョンソンを放出してしまっては膝の故障も抱えるジアンビーはさらに落ち込む可能性が高い。そしてトレードで獲得した三番手のブラウンは昨年17勝とは言え、39歳で一昨年とその前年は故障でほとんど投げていない。クレメンスと違ってとてもヘルシーとは言い難く、しかも4番手が昨年駄目駄目だったコントラレスになってしまった。しかも5番手がいないのである。ブラウンが故障で消えたら、実質的にムシーナとバスケスしかおらず、コントラレスが万が一大活躍したとしても二人足りない。有望な若手も、トレードに出す選手もいない。今後FAで拾った投手が大化けするのを期待するしかないという現状で、正直ワイルドカードも危険だ。
 オリオールズはテハダ、ハビー・ロペス、パルメイロとベテランの強打者を三人獲得した。…が、実は投手がいない。先発ではヘントゲンとジョンソンを放出してしまっているし、シーズン中に放出したエースのポンソンは帰ってきたとは言え、それ程の投手でもない。ブルペンもボロボロなのに唯一計算出来るセットアッパーのライデンバークも放出してしまった。テハダは守備の名手でショートに入って大いに投手陣を助けるかもしれないが、ロペスは肩が強いだけのキャッチャーで投手陣を引っ張れる選手ではない。打線は他にも期待出来る若手がいるのでなかなか強力だろうが、この投手陣の駒の少なさを考えると、下手をすればデビルレイズより下に行くかもしれない。
 目立っていないが、ヤンキースより上に行くかもしれないのがブルージェイズ。地味ながらも堅実な補強をしている。元々、『三冠王に最も近い男』デルガトを中心とした打線はリーグでもトップクラスで、投手陣がサイ・ヤング賞のハラディしかいないチームだった。しかし今年のオフはバティスタ、ヘントゲン、リリーと渋いながらもなかなかの先発を三人補強した。逆に元のローテからエスコバー、ライドル、ヘンドリクソンが移籍したが、後ろの二人は防御率5点台で痛手は実質的にエスコバーだけで、先発は完全に計算出来る頭数が揃った。この4人が全員故障無くやれればヤンキースを充分脅かせる。ただ不安点もある。ブルペンが弱いのだ。きちんとしたストッパーもいない。先発投手が持ちこたえられないと完全に捨て試合になってしまう。マリナーズが先発がイマイチでも負けないのはブルペンが強力だからだ。ブルージェイズは先発が7回まで完封していても8回に崩れたら負けてしまう可能性がある。せめて計算の出来るストッパー一人だけでもいればかなり違うのだが…打線は強力なので、是非とも一人は出血トレードでストッパーを獲得するべきだ。
 永遠の最下位、デビルレイズも地味ながら補強している。ティノ・マルティネス、フォーダイス、クルーズとベテランの野手をウィークポイントに補強している。昨年は打線は見れるようになったから、この補強で強力とは言えなくてもリーグ平均は上回る打線になった。あとは投手陣だが、ここは若手に期待するしかない現状だ。それでも今年は初の五割越えも視野に入れた戦いは充分出来る。中地区なら5割を越えれば充分優勝できるのだが、東地区ではオリオールズと最下位争いをするしかない。

ア・リーグ 中地区 
 なんだかコメントするのも嫌なぐらいどうしようもない事になっている。東と西が激しく補強しているので、来年はここの地区のチームは全て5割を切るのではないかと思ってしまう。実際、ここ数年は毎年この地区の優勝チームより勝率が高いのにプレーオフに出れない他地区のチームが必ずいるという状況なのである。
 それでも優勝候補を挙げるとするならロイヤルズだろう。4番のイバネズは移籍したがゴンザレスとステアーズを獲得、二人とも往年の力は無いがイバネズの穴は充分埋まる。そしてジャイアンツで2年間投手陣を引っ張ってきた捕手のサンティアゴも獲得、投手陣はプラスもマイナスも無いが大きな力になるだろう。…それでも5割を越すのが精一杯か。
 ツインズは打線が弱い中で投手力とそれを支える全員がゴールデンクラブを取ってもおかしくない守備陣で連覇を果たしたが、ストッパーのガダードとセットアッパーのホーキンスを放出。昨年は故障で投げれなかったとは言え、エースのミルトンも放出してしまった。さらに攻守に渡ってチームを支えた捕手のピアジンスキーをトレードしてしまい、代わりがブレーブスで控えだったブランコでは話にならない。他が弱いし、昨年のローテはほぼそのまま残るので5割前後は維持するだろうが例えプレーオフに出れてもとても勝てるとは思えない。ただロイヤルズも投手陣に不安があるので、この2チームを比べると力はロイヤルズが上だが安定度はツインズの方がずっと上なので、ロイヤルズがコケれば自動的にツインズの地区優勝となりそうだ。
 もっと酷いのがホワイトソックス。昨年夏に優勝出来そうで無理矢理補強したが地区優勝を逃し、しかもその時獲得したエバレットとロベルト・アロマーはオフにFAで逃げてしまった。さらにシーズン前に獲得したコロンも一年でFAでいなくなり、踏んだり蹴ったりの状況なのに補強無し。打線は復活したトーマスやオルドネスのクリーンナップトリオを含めて下位までホームランバッターが並ぶが、ローアイザー一人しか計算出来る先発がいないのでは、ハラディしかいないブルージェイズと変わらない。最低でもコロンの代わりになる投手を獲得出来れば一気に優勝候補だが…。
 インディアンズとタイガースは…書くことがありません。インディアンスはインもアウトもほとんど無し。タイガースは峠を過ぎたベテランを安く買い叩いています。でも現状がボロボロ過ぎるので、このぐらいの補強でも効果的に働いて来年は100敗はなんとか下回れるかもしれません。

ア・リーグ 西地区 
 一昨年、突然変異で勝ち続けたエンゼルスが元に戻ってアスレチックスとマリナーズの二強に戻った西地区ですが、そんなにお金持ちでないはずのエンゼルスが突然の大補強。マリナーズとアスレチックスは現状維持が精一杯で来年はこの3チームの激しい三つ巴が繰り広げられそうです。ヤンキース、レッドソックス、ブルージェイズ、マリナーズ、アスレチックス、エンゼルス。この6チームのうち3チームしかプレーオフに出られず、中地区から1チーム出るというのはどう考えても不公平な気がします。
 マリナーズは、昨年と同じ年棒総額でイチローの給料が10億円上がってしまった為、キャメロンとシリーロを放出。シリーロは2年間ボロボロだったとはいえ、キャメロンの守備力がなくなるのはかなり大きい。イバネズを獲得し打撃は同等としても守備のマイナスは余りにも大きいです。イバネズはレフトに入ってウィンがセンターに回る事になると思いますが…。ウィンのセンターがどのくらい出来るかによりますね。補強ポイントのサードも、シリーロを放出してもビックネームを補強していない為、スピージオとかハンセンとか(昔阪神にいた奴ですよ!!)イマイチな選手ばかりで、全然補強になっていません。ローズの代わりはガダードを補強したので投手陣は昨年と同じと言えます。なのでセンターの守備が落ちた以外はほぼ昨年と同じ。その昨年は貧打に泣いたわけですが、そんなマリナーズが爆発するとすればショートに補強したオリーリア。2年前はメジャー守備率1位で37HRという物凄い成績を残しましたが、それから2年間は故障持ちでさっぱり。買い叩いての契約となりましたが、2年前に買い叩いて大活躍したブーンの再来となるでしょうか。ちなみに打撃はイマイチだとしても守備は故障さえなければ計算出来るので、ブーンと鉄壁の二遊間を形成してくれるでしょう。
 アスレチックスはかなりの流出。チームリーダーのテハダ、捕手のラモン・ヘルナンデス、抑えのフォークと先発四番手のリリーが放出。しかし補強もしっかりしています。レドマンを獲得して、先発はハドソン、マルダー、ジートの3本柱と共に強力先発陣を形成。リリーフはハモンドとローズの二人の大物セットアッパーを獲得。但しストッパーは不在。ローズがストッパーに昇格する見込みだが、ストッパーとしての経験は無いのでそこは不確定要因。但し投手陣は昨年並みだ。野手は守備の名手、センターのコットセイを獲得。外野の弱さは弱点だったので、これで外野は走攻守揃った選手が揃ったが、テハダの穴は守備も打撃も埋まっておらず、ここがアスレチックスが昨年より落ちるところ。それでも先発陣の強力さで言うと西地区で最有力チームか。
 エンゼルスはゲレーロの獲得が大きく報道されていますが、最大の補強はコロンとエスコバーの二人の先発の補強。昨年は、ワールドチャンピオンに輝いた一昨年に爆発した若手先発投手がみんなグズグズだったわけですが、この二人の加入でかなり安定する事に。リリーフは元々強力なのでこれでマリナーズ、アスレチックスと肩を並べられる投手陣になりました。しかし層は薄いので、一人二人怪我をするとボコボコになる可能性はありますけれどね。打線は元々強力ですが、昨年はかなり怪我人が出ました。ゲレーロの加入で一昨年の状態に戻ったわけですが、層の薄さを考えると上の二チームよりは1ランク落ちるか。しかし充分戦えるだけの陣容にはなりました。
 そんなわけでどこが優勝するか、予想も出来ない西地区ですが、ひとつ言えるのはレンジャースが最下位だろうということです。昨年のイヴァン・ロドリゲスに続き、オフには大型契約を結んでいたパルメイロとホアン・ゴンザレスがFAで移籍。それでお金が浮いたはずなのに補強が安く契約出きる、終わったベテランばかりと言うのは、アレックスの年棒の負担が大き過ぎて身動き出来ないということなんでしょう。

ナ・リーグ 東地区 
 昨年に引き続き、フィリーズが大補強。昨年はもう駄目だろうと言われたブレーブスは今年も年棒総額削減で、本命フィリーズに対抗がメッツとブレーブスという事になりそうです。
 フィリーズは昨年はトーミなど野手の補強が中心でしたが、今年はその陣容がそのまま残って、アストロズからタダ同然でストッパーのワグナーを獲得。さらにジャイアンツのストッパーのウォーレルもセットアッパーとして獲得しました。昨年は故障で投げていなかったとは言えツインズのエースのミルトンも獲得し、FAになったミルウッドとも年棒調停で一年の契約延長。ブレーブスがさらに弱体化した今年こそ優勝を狙うチャンスです。
 対抗のメッツは、松井稼とキャメロンの二人で、課題の守備力が大幅にアップするのは間違い無し。松井稼も打撃はどうなるかわかりませんが、守備で考えれば故障さえ無ければレギュラーは堅いか。これでグラビンやライターの軟投派の先発陣を大きく助けることになるでしょう。但し、ブルペンはストッパーのベニテスを放出し、かつてのクローザーのフランコがセットアップから昇格する形で、打線もシーズン中にバーニッツを放出して上乗せ無し。3・4番が故障持ちのピアザとフロイドでは、昨年程の体たらくは無しにしても、優勝は正直厳しい気が。戦力の落ちたブレーブスと互角では?という気もします。
 そのブレーブス。年棒総額を8000万ドルに設定されたとあって多くの選手が流出しています。…8000万ドルでも上から数えた方が速いですけどね。投手陣からはマダックスが抜けました。これはこれで痛いですが、ハンプトンとオーティズの新・2大エースが残り、レンジャースで14勝もしたトムソンを獲得。昨年は故障していたバードが復帰することを考えれば、総合では昨年より落ちているとは言え、フィリーズやメッツと互角でしょう。そしてブルペンはスモルツが健在で、入れ替わりはありましたがセットアッパーもいますので、投手陣は悪くありません。問題は打線で、昨年は投手陣が落ちた分を打線で補っての優勝でしたが、今年はその打線を支えたシェフィールドとハビー・ロペスがFAで移籍。代わりはカージナルスで期待されながらいつまで経っても20HRの壁を越えられないドリューとあっては落ち込みは避けられません。ダブル・ジョーンズは健在なので貧打というわけではないので、あとは試合巧者振りでどこまで戦力差を埋められるかといったところ。ビデオゲームなら、フィリーズには確実に差は開けられています。
 昨年ワイルドカードでワールドチャンピオンをさらったマーリンズですが、イヴァン・ロドリゲスにリー、そして先発のレドマン、外野のホランズワースとエンカナーシオンとレギュラークラスが続々離脱。昔、優勝した時はほとんどいなくなりましたが、それと比べれば少なめ。それでも現状では5割勝つのでせいいっぱいか。
 エクスポズは主軸のゲレーロがFAで移籍。近々FAのバスケスもトレードでヤンキースに放出。代わりにニック・ジョンソンを手に入れたのでゲレーロの代わりに期待は出来ますがフルシーズン働いた実績はなく、バスケスの代わりもいない状態です。ここ数年は5割越えをしていましたが、来年は少し厳しいかもしれません。もう1人二桁が計算出来る先発がいれば、というところですが。

ナ・リーグ 中地区 
 来年はカブスとアストロズの2強に、力の落ちたカージナルスがどこまで食い下がれるかという構図になりそうです。
 アストロズはストーブリーグ序盤にストッパーのワグナーをマイナー選手との交換でフィリーズに放出、球界に衝撃が走りましたが、その後ヤンキースのエース、ペティットの獲得に成功、さらにクレメンスまで獲得してしまいました。バグウェル、ケントのクリーンナップは健在、リリーフも強力で、先発陣の整備が長年の課題だっだけに、この二人の獲得は非常に大きい。クレメンスは1、2年としてもペティットはまだまだ若く、これから軸になってくれます。ワグナーの放出を、セットアッパーから昇格するドテルが埋めてくれれば優勝候補No.1でしょう。 カブスは穴だった一塁にデレク・リーを獲得、ストッパーのホーキンズもゲットしました。強力な先発4本柱は来年も健在で、アストロズと力は互角と言えるでしょう。
 カージナルスはティノ・マルティネスとビーニャ、ドリューを放出。ティノとビーニャは昨年は満足に働けなかったとは言え、それが優勝を逃した原因だけに、代わりの補強も無くスーパースター軍団は崩壊の危機に。センターのエドモンズ、ファーストにコンバートのプホルス、サードのローレン、ショートのレンテリアはスーパースターとして健在ですが、空いた外野の両翼を埋めないと、投手陣は弱めなだけに優勝は厳しいところ。ライトはサンダースを補強して打撃は合格点も守備は悪く、年寄りなのでフル出場は厳しいです。それでも強いチームなので余程の事が無ければ5割は切らないでしょうが、アストロズ、カブスの戦力の前には劣ってしまいます。
 下位の三球団は…書くことも無いので勘弁してださい。

ナ・リーグ 西地区 
 昨年、ぶっちぎりで優勝を決めたジャイアンツは戦力維持。他の3チームがだらしないので、6地区で唯一安泰かもしれません。ここ数年投手陣を支えたサンティアゴが移籍も、ツインズから獲得したピアジンスキーはそれに劣らない上にまだ若く、FAで流出さえしなければ見事な補強です。先発も10勝10敗投手とは言えトムコを獲得したので、死角は特に無し。昨年ストッパーをしたウォーレルが移籍しましたが、ネンが故障から帰ってくるので恐らくは平気でしょう。
 対抗できるチームははっきり言って無し。順番に紹介すると、ドジャースは打線の強化が必須なのに何の補強もしていません。しようとしたのですがみんな逃げられました。ブラウンをドジャースに放出してウィーバーを獲得したのは、年棒総額や年齢を考えれば正解ですが、来年優勝を狙うには厳しい選択です。
 ロッキーズはバーニッツを獲得。強打の打者ですが、打高投低のロッキーズがこれ以上打者を補強しても意味が無いです。
 パドレスはセンターのコットセイを放出も、ここ数年課題だった捕手にラモン・ヘルナンデスを獲得。最悪の状態からは段々陣容も整ってきましたが、それでも優勝戦線に顔を出すにはまだまだでしょう。
 ダイヤモンドバックスはセクソンをブリュワーズから獲得して打線は梃入れしましたが、放出したシリングの穴は埋まりそうにありません。投打ともに平均的なレベルでしかなく、5割がせいいっぱいというところか。
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